23andMeでゲノムが、77.32%一致した人と会って話してみた。(2014.2.18撮影)


★28歳で資産8000万円。(2014.2.18)

その男性が取り出したのは一冊の本、彼自身が執筆した本だった。

彼は、区分所有という方法から始めて、28歳で家賃収入月70万円、資産8000万円を作ったとのこと。現在不動産投資を主業として、その他に輸入販売業などを手懸けている起業家・実業家だった。その関係では有名な人なのかもしれない。

私が、ハプロタイプに興味を持ったのは、純粋に人類学的興味からだったが、彼が23andMeを試してみたのは、自身の将来の健康状態に興味を持ったからだと言う。

彼は今、全精力を傾けて、より自己資産を増やすことを楽しんでいる様子だった。実際、帰宅後、彼の著作を熟読してみたが、そこには彼の人生哲学が書かれており、読んでいても飽きることなく、そして、資産を増やすことの出来るノウハウがびっしりと書かれているものだった。

しかし、その順風満帆の彼の中での唯一の懸念材料が、将来の健康状態にあるという。

せっかく、資産家になれても、重篤で寝たきりになったら意味がない。今ある資産運用も当面は自分が精力的に活動出来て、初めて軌道に乗せることが出来るということらしい。これもまた尤もな意見であった。

話は少し戻るが、この時点で、私と彼はゲノムを77.32%が共通し、同一父系に属する子孫であるにも関わらず、私と彼はお互いに生き方、考え方はまるで違う、ほぼ180度違うということに気づいていた。

特にお金に関する考え方である。彼は、信用も人脈も資産も無いところからスタートして自己資産を増やし、そして今もそれを拡大しようとしている。それ自体は偉いと思うし、そういう生き方を否定するつもりは毛頭無い。ただ、タイプ別に分けるとしたら「お金を中心に考える生き方」である。彼の著作を読めば分かるが、彼は常に自分の損益対照を考えて行動をしているのである。例えば人生の伴侶たる妻を選ぶにあたっても、連帯保証をしてくれる、投資に理解のある女性を選ぶには、「投資セミナーで出会った女性と結婚すべし」と彼は実体験からそう著作で記していた。そういう意味で彼は清々しいほど首尾一貫して「資産を増やす」ということに対して人生を費やしてきた訳である。

彼が学生時代に読んだ本で、人生観が変わるほど影響を受けてた本が『金持ち父さん、貧乏父さん』と云う本であると語った。人それぞれなので、彼に対する批判めいたことは言いたく無いのだが、その本は実は私の嫌いな本なのである。
件の本は、「お金の仕組みを知って、お金持ちになる」と云うことが人生の成功であるというような人生観が書かれた本で、謂わばユダヤ人的な価値観、俗欲の塊のような書物なのである。

一方、私が高校時代に読んだ本で、影響を受けたのは、祖父の書斎にあった佐藤信淵の『宇内混同秘策』や、山本常朝の『葉隠』、藤田東湖の漢詩『正気之歌』などである。そこには、それまでの私の人生で違和感を感じてきたことの答えが総て書かれていたと云って良いのでは無いだろうか。

私は男の生き方と云うものは、盡忠報国・殉皇至誠という言葉に盡きるのではないかと思っている。お金を幾ら稼いだところで、ひとたび戦争が起きればそんなものの価値など如何ほどあるのだろうかと考えてしまう。そうなれば最前線で戦い、護国の礎となれば本望である。ゆえに「資産を増やしたい」という欲望に対して全くピンとこないのである。

これは、私と彼の育ってきた環境が違いすぎるせいなのだろうか? 私は、人生の伴侶たる妻とは大恋愛をして結婚したので、彼の女性選びにも全く違和感を憶えた。

私自身が、お金に苦労した人生を送ってきた訳では無く、現在もそれなりに不自由無く生きてゆけているからかもしれない。私の父も、祖父も、曾祖父も幸いなことに、それなりに社会的に成功を収めていたが故のものだろうか、私の中には、彼のようなハングリー精神が見当たらない。あるのは、先祖の遺徳に対する感謝の気持ちである。

私は、国難があれば殉じるつもりで生きてきたので、「自分が癌になったら」ということなど、露ほども興味が湧かなかったのである。癌であろうが無かろうが銃弾を浴びれば人は死ぬものだからである。病気を治療するよりも、むしろそうなれば最前線に送り出して欲しいとそう考えてしまう訳なのである。今まで私が生きてこれたのも、我々日本人が現在平和な生活が出来るのも、我々の郷土を守る「楯」となられ護国の英霊となられた先人、あるいは国家に一命を捧げ傷痍された方々がおられたからである。

私自身は、右翼でも国粋主義者でも無い平平凡凡たる一般人であるが、そんな私でも一旦緩急あらば、義勇を公に奉じて、皇恩(今こうして生きている事に対する恩)に報いるのが男の本懐なのではないかとどうしても考えてしまうのである。古い歌の歌詞では無いが「財閥、富を誇れども、社稷を憂う心無し」と云う心境なのである。

あの時、彼がわが家の出征写真を撮らせて欲しいと言ったのは、彼と私との考え方、あるいは、彼の家と私の家との考え方が余りにも違い過ぎていたが故に起きた、好奇心の対象であったのかもしれない。

…ところが、話題がつぎに移った瞬間、ある体質の一致点に私と彼は慄然としたのである。(つづく)


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