日露開戦詔勅(宣戦布告文)



★日露開戦詔勅(宣戦布告文)

天祐を保有し萬世一系の皇祚を践める、大日本國皇帝は、忠實勇武なる汝、有衆に示す。
朕、茲に露國に対して戦を宣す。
朕が陸海軍は宜く全力を極めて、露國と交戦の事に従ふべく、朕が百僚有司は宜く各其の職務に率ひ其の権能に應じて國家の目的を達するに努力すべし。 凡は、国際條規の範囲に於て一切の手段を盡し遺算なからむことを期せよ。

惟ふに、文明を平和に求め、列國と交誼を篤くして、以て東洋の治安を永遠に維持し、各國の権利・利益を損傷せずして永く帝國の安全を将来に保障すべき事態を確立するは、朕、夙に以て國交の要義と為し、旦暮、敢て違はざらむことを期す。 朕が、有司も亦、能く朕が意を軆して事に従ひ、列國との関係、年を遂ふて益々親厚に赴くを見る。

今、不幸にして露國と釁端を開くに至る。豈、朕が志ならむや。 帝國の重を韓國の保全に置くや一日の故に非ず。是れ両國累世の関係に因るのみならず、韓國の存亡は實に帝國安危の繋る所たればなり。 然るに露國は其の清國との明約及び列國に対する累次の宣言に拘はらず、依然満洲に占拠し益々其の地歩を鞏固にして、終に之を併呑せむとす。若し満洲にして露國の領有に帰せん乎。

韓國の保全は支持するに由なく、極東の平和亦素より望むべからず。故に朕は此の機に際し切に妥協に由て時局を解決し以て平和を恒久に維持せしむことを期し、有司をして露國に提議し半歳の久しきに亘りて次折衝を重ねしめたるも、露國は一も交譲の精神を以下て之を迎へず、曠日弥久、徒に時局の解決を遷延せしめ、陽に平和を唱道し陰に陸海の軍備を増大し、以て我を屈従せしめむとす。
凡そ露國が始より平和を好愛するの誠意なるもの毫も認むるに由なし。露國は既に帝國の提議を容れず、韓國の安全は方に危急に瀕し帝國の國利は将に侵迫せられむとす。 事既に茲に至る。
帝國が平和の交渉に依り求めむとしたる将来の保障は今日之を旗鼓の間に求むるの外なし。

朕は汝、有衆の忠實勇武なるに倚頼(いらい)し、速に平和を永遠に克復し、以て帝國の光榮を保全せむことを期す。

御名御璽

明治三十七年二月十日


■HOMEへ